神隠し


現れたおかん

708 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/03/13 02:34

山で薪を切っていたら、そこに白髪を振り乱した初老の女が現われた。
すわ山姥かと思い鉈をもって身構えたところ、女は
「待ってくれ、お前は新田の茂平の息子の竹蔵だろう」
と、こちらの名前を言い当てる。
なにしろ山の中でのこと。うかつに返事ができないので黙っていると
女は「おらだ、おらだ、清十郎の娘のおかんだ。」と叫んだ。
確かに、子供の頃から幾度か、昔村でおかんという娘が神隠しにあったということを聞いている。
「腹が減ってなんねえ。食い物をわけてくれねえか。」
ふと哀れになり、その日の弁当を投げ与えると
おかんと名乗った女は、竹包みをひっつかんで
そのまま走って逃げていった。
それからの行方は知らない。


瓜と女の子

891 名前: あなたのうしろに名無しさんが・・・ 04/05/06 23:09 ID:9nmyBpmO

父から聞いた話をもうひとつ。山と直接かかわりない話で恐縮ですが、
山間の集落で起きた出来事なので、もしかしたら山の怪と何か関係が
あるかもしれません。

これも父が若かった頃の話です。
父と同じ集落に住む若者の一人が妹をつれて親戚の家へ行きました。
彼らは日が沈んでから家路につきましたが、その途中、若者が
何か違和感を感じ、うしろを振り返って見たところ、自転車の荷台に
乗っているはずの妹が、姿を消していたそうです。

若者は最初「妹が自転車から落ちてしまった」と思い、あわてて道を
引き返しました。しかし、通って来た道のどこにも妹は居ませんでした。

つづく


896 名前: 891つづき 04/05/07 01:01 ID:Cm8oMRwG

女の子が夜中にいなくなったという事で、集落の男衆が集められ、
捜索が開始されました。
父の記憶によると、かがり火をいくつも焚いた大捜索だったそうです。
そして皆、いなくなった女の子の兄が自転車で通った道 「以 外」 の
場所を、くまなく探しまわりました。

その甲斐あって女の子は無事に発見されましたが、不思議な事に
女の子は、親戚の家→自宅の(一本道と言って差し支えない単純な道のり)
とは全く方向を異にする田んぼの中にうずくまっていたのです。

つづく


899 名前: 896続き 04/05/07 01:32 ID:Cm8oMRwG

女の子が発見された時、その横にはウリの実の皮が
落ちていました。

ウリは、人でもケモノでもない者が食べたとした言いようの無い、
溶かされた・・・あるいは、なめ尽くされたような状態で落ちていました。
それを見た人々の間に、「ああ、やっぱり。」というような空気が流れたそうです。

父は、「自分も含めて皆、最初から、女の子は人外のものに隠されたと
半ば以上確信していた」と当時を振り返ります。

盛大にかがり火を焚き、女の子がいるはずのないような場所まで探しに行ったのは、
そういう訳なのだ、と。

ただ、山鳥の件でもそうなのですが、「アレはこういう名前のものだ」とか
「こういう特徴があるんだ」とかいう話は父も耳にした事はないようです。


源三

866 :1/4:2008/12/07(日) 04:15:45 ID:VKfH9O4P0
長文になるけれど、猟師をしていた曾祖父から聞いた話。 

曾祖父の生まれた場所は、山奥の寒村で、高祖父は猟師だった。 
曾祖父は幼い頃から、父である高祖父と共に山々を歩き回って暮らした。 

曾祖父の村に、源三と言う猟師の男がいた。 
源三は猟師の癖に、滅多に獲物を持ち帰らない男だった。 
変わった男で、とにかく明るい。意地の悪さや暗いところがないと言うので、 
村の人間、特に女衆からの受けが良かった。 
ただし、若い男や猟師仲間からは小馬鹿にされていた。 
曾祖父も、源三のことは余り好きではなかった。 
だが、不思議と高祖父は源三を可愛がっていた。 

ある時、村の5歳の男の子が行方不明になった。 
当時は神隠しは珍しいものではなく、その時も、男の子を最後に見かけたのが 
山の入り口だったと言うので、人々は神隠しだ、と囁き合った。 

曾祖父の村では、神隠しが起こると、村人総出で山へ入り 
「返せ、返せ」と喚いて回る。山の神への抗議行動だ。 
その時も、村人達は山へ入り、「返せ、返せ」と騒いで回った。 
猟師たちは、村人の入れない奥深くへと捜索へ出る。 
当時、14・5歳だった曾祖父も勿論、捜索へ加わったのだそうだ。 

しかしながら、男の子は見つからなかった。 
捜索3日目、村人は今日を最後に山へ入るのをやめると言う。 
皆、生活があるので仕方がない。猟師達も同じだ。 
季節は晩秋、夜は冷える。冬眠前の獣も活発に動き回っている。 
これ以上捜索したところで、もう見つかるまいとの総意だった。 


867 :2/4:2008/12/07(日) 04:16:37 ID:VKfH9O4P0
次の日、両親だけが山へ入る姿を、曾祖父はなんともいえない気持ちで見送ったと言う。 
曾祖父の姉も、10年ほど前に神隠しに遭っていた。 
村一番と言われる高祖父が、半年に渡って探しても、 
姉の着ていた服一切れすら見つけることが出来なかったのだそうだ。 

その日、曾祖父と高祖父はカモシカを一頭仕留めて戻った。 
途中、岩場で霧に巻かれ、視界を失う程だったと言う。 
そこで曾祖父は、子供の泣き声を聞いた。 
神隠しに遭った男の子ではないのか、そう言う曾祖父に、高祖父は首を振った。 
「あれはもう10年も前から聞こえて来る。決まって霧が出た時だけ聞こえるのだ」 
そう語った高祖父の目は、涙が溜まっている様に見えた。 
泣き声は神隠しに遭った姉のもの、高祖父はそう信じているようだった。 
曾祖父はただただ、姉の魂に黙祷を捧げたのだと言う。 

カモシカを持ち帰り、高祖父と曾祖父は眠った。 
早朝、目を覚ました曾祖父は、何気なく庭へ出た。 
曾祖父の家は、裏庭が山へと繋がっており、その日も何気なく山を見ていた。 
すると、男がひとり、ゆっくりと山を降りてくる。 
どうやら、数日前(神隠しが起こるより前)から山へ出ていた源三のようだった。 
源三は、下手糞な子守唄を歌いながら降りてくる。 
よく見ると、背中に誰かを背負っている。曾祖父は慌てて源三に駆け寄った。 

源三が背負っていたのは、行方不明になっていた男の子だった。 
男の子はぐっすりと眠っており、大きな怪我もない様子だ。 
どこで見つけたのか、問い詰める曾祖父に、源三は困った顔で語った。 

源三はカモシカを追っていた。岩場(曾祖父が泣き声を聞いた場所)で数日を過ごした。 
なんとか一頭仕留め、喜んで走り寄る途中、足を滑らせ崖を落ちた。 
「俺もここまでか」そう思ったが、目を覚ますと特に怪我はしていなかった。 
「運がいい」そう思いながら、元へ戻る道を探していると、急に霧が立ち込めて来た。 
そして、泣き声が聞こえてきたのだと言う。 


868 :3/4:2008/12/07(日) 04:20:44 ID:VKfH9O4P0
源三は何故こんな山深くに子供の泣き声が、と驚き、何度か声を掛けた。 
しかし、返事はない。歩き回ろうにも、視界がまったくと言っていいほどにない。 
仕方なく子守唄を歌ってみた。源三の村で歌われている子守唄だ。 
すると、泣き声が止んだ。しばらくして、霧の中、少女が源三の傍へやって来た。 
「弟が怪我をしてる」少女はそう言うと、源三の袖を引っ張る。 
少女についていくと、落ち葉をかき集めた岩の陰に、男の子が眠っていたと言う。 

男の子を背負って、さあ戻ろうと振り返ったら、少女はいなくなっていた。 
さっきまで、あれほど立ち込めていた霧も晴れていた。 
探しても探しても見つからなかったので、仕方なく岐路に着いた。 
途中、女の子が木陰から覗いていた。追いかけると、やっぱりいなかった。 
きっとあの子は神様かなんかだろうと思う。この子を村に返したかったんだろう。 

源三はそう言うと、人好きのする笑顔を浮かべた。 

曾祖父は泣いた。きっとそれは姉で、泣き声は自分も聞いたのだと言って泣いた。 
すると源三は「そう言えば、目元がお前によく似てた」と言い、 
「泣くな、最後は笑ってたでな」と曾祖父の頭をくしゃくしゃに撫ぜてくれたのだと言う。 

曾祖父はその日から、源三を嫌わなくなった。 
源三は不思議と、獲物を持ち帰る日が増えた。 
理由を問うと、獲物の気持ちが分かるのだ、と源三は照れ臭そうに言った。 

数年もしない内に、源三は村周辺に名の通った猟師になった。 
高祖父はそんな源三を、目を細めて嬉しそうに見ていたと言う。 
更には、源三はその後、神隠しに遭ったとされる人間を3人も見つけ出した。 
毎回、あの少女が教えてくれるのだと、源三は語ったそうだ。 

そんな源三、ある雪の降る晩、ふらりと山へ入り、二度と戻ってはこなかった。 
捜索に出た曾祖父は、あの岩場で下手糞な子守唄を聞いた。 
だが、どれだけ声を張り上げて名を呼べども、源三は答えなかったと言う。


タケノコ堀りで消えた少女

147:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/05/28(金) 04:20:08.71 ID:MTiDFAyO0
2005年に起きたタケノコ掘りで少女が忽然と消えた事件

60人あまりが参加した地域のタケノコ堀りのイベントで母と2人でタケノコを掘ってて、「もう1個探してくる」と言い残しその言葉を最後に消えてしまった少女。
山を探しても池を探しても一向に手がかりが見つからない。

警察犬を導入し、捜索した結果、全ての警察犬がある地点で立ち止まった。
もしこの地点である人物に抱えられて誘拐されたとしても、警察犬はその残り香を辿ることができる。

警察犬はその人物の香りを辿るのではなく、靴と地面の摩擦臭を辿るのである。
ここで誘拐されたとしても、犯人の残り香が必ず残っているはずである。
しかし、全ての警察犬が吼えるばかりで、この地点から全く動こうとはしなかった。
つまりこの地点で少女の気配が完全に消え去ったことになる。
警察犬協会の会長も皆目検討がつかないと言う。
4年経った今でも消息不明。


ばあさんのばあさんが経験した神隠し

794 :本当にあった怖い名無し:2012/12/30(日) 21:11:27.74 ID:eyvNsHzd0
うちの昭和7年生まれのばあさんのさらにばあさんが子どもの頃のことだから
明治か江戸時代??かもしれない話
それがわが家に伝わってきたのを書いてみる

そのばあさんが12歳ぐらいのときに神隠しにあった
当時は里子に出されたり人買いに売られたりなんてこともあったそうだが
そういう親が事情を知っていていなくなったのではなく本物の神隠し
夕方、赤子の弟の子守をしながら裏をぶらついていたと思ったら
いつのまにかいなくなって赤ん坊だけがおんぶ紐といっしょに草の上で泣いていた
集落の若い者大勢が出てさがしたが見つからない
そのうち夜になって街灯もない頃だから明日の夜明けからまた探そうということになった

そうしたら当時のじいさん(俺から見れもはや遠い先祖)が
女の子の神隠しは神おろしの憑坐(よりまし)にしようとしてさらっていった場合が多い
憑坐の手順には普段使ってる櫛が必要で
さらっていったものか術をかけられた本人が取りにくることがある
だから櫛を隠しておけば目的が果たせなくなって子供が返されることもあると言って
箱に入れて自分が寝ている納戸に持っていった


795 :本当にあった怖い名無し:2012/12/30(日) 21:12:01.79 ID:eyvNsHzd0
それからじいさんは本当はネズミがいいんだが時間がない、と言いながら
大きなガマを捕まえてきて鎌の先で腹を割き、内蔵を櫛にまんべんなく塗りつけた
同時にアワかなにかの実をぱらぱらふりかけた
その晩じいさんが櫛の箱を枕元において寝ていると
なにかがやってきた気配がある
じいさんは起きていたんだが体が動かないし、叫ぼうとしても声も出ない
そのときに笹みたいなにおいが強くしたそうだ

何かかなり大きな妖物がきている圧迫感がある
妖物は枕のすぐ上にある櫛箱に手をかけたようだが
ビーンと弾く音がして、さらにパシッと叩きつけられたような固い音がする
そして「けがれ・・・」という咳が言葉になったような声がして気配が消えた
しばらくじっとしていたら体が動くようになったんで
明かりをともしてみると櫛が箱から出て床に落ちており、櫛の歯がばらばらに折れていたそうだ

で、ばあさんは昼前に集落の氏神の森から歩いて出てくるところを見つかった
本人にさらわれていた間の話を聞いてみてもまったく要領を得ない
木の葉がゴーッと鳴って目の前が白くなり立っていられなくなってうずくまると
背中の赤子が、まだしゃべれないはずなのに「か・し・こ・み」と一語ずつはっきりと声に出した
さっと太い腕でかつがれた感じがして、そのあとは貝の裏側のように
虹色にきらきら光る場所でずっと寝ていた
まぶしくて目を覚ますと鎮守の森の入り口のあたりにいたんで家にもどろうとした、と言う
まあこれだけなんだけど


(コメント)

神隠しとは、簡単に言うと原因不明の行方不明のことですが、何十年も前に神隠しに遭った村人と山中でひょっこり会った、という話はよく聞きます。行方不明当時の年恰好だったり、老いていたり、と状況も様々です。中には出会った人に所持品を託したりすることもあるようです。古来より神隠しは人間以外の者の仕業と考えられてきました。さらったのが天狗だったり、山の主だったり、物の怪だったりと、どれも人間離れした異界の住人ともいえる存在ですが、一種の畏怖を伴って神隠しという出来事が受け入れられてきたのも事実です。神隠しとは厳密には違うのでしょうが、江戸時代には寅吉という少年が、山に住む山人の世界に出入りし、修行を積んだという記録が平田篤胤の手によって仙境異聞として残されています。皮肉なことですが、現代では神隠しより北朝鮮による拉致の方がはるかに恐ろしいわけで、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものです。


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